女性泌尿器は、泌尿器科と産婦人科の境界領域を診療する、比較的新しい診療科です。おしっこの問題や骨盤臓器脱(性器脱)などについても、一人でお悩みにならずに、お気軽にご相談ください。
こんな症状・疾患の方はご相談ください。
- 尿が漏れる
- おしっこが近い、回数が多い
- 夜間、何度もおしっこに起きる
- 尿が残っている感じがする
- おしっこに血が混じる
- 腟から丸いものが脱出する など
女性泌尿器の主な対象疾患
- 尿失禁(尿漏れ)
- 過活動膀胱
- 膀胱炎
- 骨盤臓器脱(性器脱) など
女性泌尿器で扱う代表的な疾患
腹圧性尿失禁
正常であればお腹に強い力(腹圧)がかかった場合でも、尿が漏れることはありませんが、出産や加齢によって、尿が漏れるようになってしまう方が増えてきます。咳をする、くしゃみをする、笑う、走る、テニスやゴルフなどのスポーツをする、重い物を持ち上げる、坂道や階段を昇り降りする、などのおなかに強い力が掛かるような動作をした時に尿が漏れてしまいます。
膀胱や膣の変化を判断し、尿失禁の原因を考え対策を考えます。「骨盤底筋体操」などの、自分で行う訓練は、正しい方法で、ある程度の期間しっかり行うことができれば、かなり多くの方で効果がある方法です。「骨盤底筋体操」では、膀胱、尿道、膣などを支えている、骨盤底筋という筋肉を、意識的に動かします。腹圧性尿失禁が重度の方では、手術(人工のテープを尿道の下にいれる手術など)を検討します。
切迫性尿失禁
「トイレに行きたい」と思ってトイレに行こうとして、トイレまで間に合わずに漏らしてしまうタイプを切迫性尿失禁と言います。トイレのドアノブに手をかけた時や、トイレで下着をおろしている時など、トイレまであと少しという気が緩んだ時に漏れやすいといわれています。
過活動膀胱(OAB)の程度の重いものでは、切迫性尿失禁になりやすいと言えます。非常に簡単に言えば、尿意を我慢する機能が低下しているということですので、尿意を我慢する力を鍛えることが治療として考えられます。膀胱訓練や骨盤底筋体操などが指導されることが多いのですが、人間はできないと思うことはなかなかできるようにはなりません。その患者さんができる方法で訓練をはじめるべきです。訓練以外の方法としては内服薬があります。膀胱の働きを抑えて我慢を楽にさせるような薬剤ですので、根本的な治療というよりは、症状を抑える薬と考えてください。薬を補助として使いつつ、訓練を行うことをおすすめしています。
子宮脱・膀胱瘤
女性の骨盤は出産の際に赤ちゃんが通りますので、その部分がどうしても弱くなりがちです。出産や加齢によって骨盤を支えている筋肉や靭帯などが伸びてしまい、おなかの中の臓器が支えられなくなり、膣から臓器が出てきてしまうことがあります。これが骨盤臓器脱という病気です。
臓器の中でも、特に出てきやすい臓器としては、子宮や膀胱が上げられます。子宮が膣より出てきた状態を子宮脱とよびます。子宮は腟の壁とつながっているため、子宮が下がれば当然腟の壁もめくれたように外に出てきます。膀胱が下がってきて腟の外に出てきたものを「膀胱瘤」、直腸が出てきた状態を「直腸瘤」と呼びます。
以下のような症状が見られたらご相談ください。
- 腟から丸いものが脱出する
- ピンポン玉のようなものが触れる
- 股の間に何かが挟まっている感じがする
- 下腹部が引っ張られる感じ・下がってくる感じがする など
骨盤臓器脱は軽症であれば、おなかに力が掛かった時だけ一時的に脱出する程度ですが、重症化すると、常に脱出した状態になります。とくにこの症状は、長時間の歩行・運動の後に悪化しやすくなります。また朝方には何ともないのに、夕方になると症状が気になってくる方が多いようです。飛び出した状態をそのままにしておくと、いっそう骨盤を支えている部分が伸びてしまい状態が悪化するため、なるべく飛び出した状態を避けるようにしておいた方が望ましいです。
治療には、矯正下着を使用する方法や、膣の中にペッサリーを装着する方法があります。程度が重度の患者さんでは、総合病院で手術を行います。上記のような症状でお悩みの方は、恥ずかしがらずに、まずはご相談ください。